復興デザイン会議第五回「復興政策賞・復興計画賞・復興設計賞」最終審査委員会(審査委員長:羽藤英二)が行われ、葛尾村あぜりあが、復興設計賞を受賞しました。
竣工直後ではなく、実際に村の方が活用されている状況に光を当てていただき、プロジェクトに携わった私達としても大変光栄に思います。
村の方とのワークショップを通して、大きな屋根による一室空間に居場所を作り出そうとしたことを生かしていただいます。
葛尾村、一般社団法人 葛尾むらづくり公社、株式会社はりゅうウッドスタジオ、日本大学工学部浦部智義研究室
審査員の方からのコメントです。
福島第一原発事故のあと国の指示を待たずに村の決断として全村避難をした葛尾村のコミュニティのための交流館。避難だけでなく、復興まちづくりも自治の精神が重視され、そのシンボルとして「あぜりあ」は建設された。まずは場所選定が秀逸である。かつて赤松の集積と物流拠点であり、村役場にも近く、主要な道路と河川が交わるまとまりのあるエリアが選ばれている。平面は「何にでも使える」ようにゆったりとした幅の空間が蛇行しながら連続したものとなっている。帰還住人が0人、将来が見通せない段階からプロジェクトがスタートしたことがきっかけとなって生まれた平面だが、蛇行による見え隠れや、川と駐車場の両側に所々に設けられた開口部などは空間にメリハリと奥行きを作り出し、結果として日常的に立ち寄れるような寛容な居場所も作り出していた。地域のシンボルであった民家の古材を利用することや、地域産材を積極的に使いながら縦ログ工法で建設することは、一般的な合理性を超えて地域のシンボルとなる空間の質を作り上げていた。なお、運営は原発事故後のむらづくりを推進すべく設立された「葛尾むらづくり公社」が担っており、コミュニティの維持・形成の支援をはじめ、環境維持や地域事業者に対する支援事業だけでなく、近年はあぜりあの「道の駅化」にも取り組もうとしていると聞く。まさに葛尾村の復興とともに成長していく施設である。原子力災害という複雑で困難な災害からの取り組みとして復興建築の新たな可能性を具現化していることから、「葛尾村復興交流館あぜりあ」を復興設計賞として表彰する。