ロハス(LOHAS: Lifestyles of Health and Sustainability)を教育・研究の柱とする日本大学工学系キャンパス内にあり,研究の情報発信や交流を目的とするサイエンスカフェ的な機能を持つ施設である.既存の豊かな緑と地下水を活かし,雨水・地下水を温熱環境に寄与させるかたちで屋上も絡めた水循環や,断熱も期待できる屋上緑化へ展開もしている環境建築とした.隣接する付属高校生も含めさまざまな人が行き交うキャンパスの結節点にあり,周辺環境を読み解いた特徴ある造形だが,私たちも開発チームの一員である縦ログ構法や小径材を用いた架構の内部空間,広葉樹の家具による空間は,居心地も重視している.
建築用木材は,福島県南から北関東に広がる八溝山系のスギ材を郡山市内の先進プレカット機を持つ工場で加工したもので,家具は,藤江和子氏に協力を依頼し,南会津町南郷・館岩地区で先達が伐採した広葉樹を保管する木材工場を拠点とし,クリ材を手加工した4mのカウンターやクローバー型の広葉樹幅ハギのテーブルを実現した.
そのような地域木材利用や製材は,林業への提案性もあり,この建築のプロセスに深く入り込んだ研究室の学生への教育的価値や木材など地場産業の関係者との連携を深化させた.
今後は同じ敷地内に,工房等の機能を備えたロハスの森「スタジオ」も計画しており,「ホール」での交流も含め,地域に暮らす多くの人々の可能性をさらに広げる建築となること期待している.
(浦部智義/日本大学工学部+滑田崇志・斉藤光/はりゅうウッドスタジオ)
環境計画 曲面状緑化屋根は,遮熱・断熱による室内温熱環境の安定化機能は元より,大気浄化,水質浄化,癒しを与えるヒーリング機能,景観美化,生物多様性への貢献など,多面的な恵みを与えてくれる. それらの実証によって,グリーンインフラの理解と社会実装が進み,持続可能なロハスのまちづくりに繋がることが期待できる.水蓄熱空調システムは,地上外部に蓄熱タンクを設置し,そこに溜めた地下水を利用したシステムである.その蓄熱水は,災害時の中水としての活用,施設屋上植栽に散水すれば気化熱による冷却効果,冬期は,太陽熱集熱器により蓄熱タンクの水温上昇(効率が上がる)が期待できる. 本計画は,パッシブデザインを基本としているが,外部と室内の熱のやり取りを抑える断熱はもちろんのこと,縦ログ壁と床の煉瓦蓄熱によって建物の熱容量を大きし蓄熱効果を狙う.蓄熱効果は,開口部の開閉や使われ方等の影響で,効果が異なるであろうことから,暖冷房との組み合わせも含めて検証が必要である.左のグラフは,暖冷房を用いず終日閉め切った状態で室内環境を試験的に計測値したデータである.日中30℃以上となる場合でも,深い庇による日射遮蔽と蓄熱効果により室内温度の上昇は抑えられている.夏期は,夜間換気による蓄冷によって,本計測以上に日中の温度上昇を抑えることも可能であろう.
(中野和典+宮岡大+浦部智義/日本大学工学部+滑田崇志/はりゅうウッドスタジオ)
設計──────────────────
計画 日本大学工学部ロハス工学センター
担当/浦部智義 岩城一郎 中野和典 宮岡大
建築 はりゅうウッドスタジオ 担当/滑田崇志 斉藤光
日本大学工学部浦部智義研究室 担当/浦部智義 高木義典 小原烈 長内勇樹
構造 坂田涼太郎構造設計事務所
担当/坂田涼太郎 堀内拓磨
設備(基本) ZO設計室
担当/柿沼整三
設備(実施・機械) エム設備設計事務所
担当/齋藤義彦
設備(実施・電気) 鳳設備設計事務所
担当/佐藤公明
家具設計 藤江和子アトリエ
担当/藤江和子 野崎みどり
照明計画 スパンコール
担当/村角千亜希 ニノ倉絵里
ランドスケープ STEP
担当/徳永哲
施工──────────────────
建築 蔭山工務店
担当/蔭山寿一 佐久間慎之介 矢内叶斗
空調・衛生
北心設備 担当/白井健夫
電気 エディソン 担当/遠藤俊一
家具制作
伊南川木材 担当/五十嵐恵ニ
オギノ 担当/三原三男 宍戸繁男 松尾文隆
屋上緑化 日比谷アメニス 担当/坂本哲 勝田翔
プレカット 藤寿産業 担当/清水國人 松本智歩
機械制御 大阪テクノクラート 担当/西島一幸 寺田康宏
規模──────────────────
建築面積 200.83m2
延床面積 177.5m2
各階床面積 1階 177.5m2
階数 地上1階










