通り土間の家

土間と雁木が家族を繋ぐすまい

お施主様が語られた、この土地に代々続く過去の記憶から、通り土間と雁木が繋ぐ、シンプルな二段構成の住宅となりました。通り土間には自然光が差し込み、和紙の壁から家族の気配が伝わる、あたたかな空間となっています。

建物概要
用途:住宅
延床面積:157.49㎡(2階建)
構造:木造在来軸組工法
施工:芳賀沼製作
設計:はりゅうウッドスタジオ
総工費:

通り土間
玄関扉を開けると正面の勝手口まで一直線に通り土間が伸びる。天井の高い吹き抜け空間となっておおり、2階の部屋とも繋がる。高窓からは光が差し込み、風が気持ちよく流れる。

キッチンと土間続きにあるダイニング

設計コンセプト
施主は初回の打ち合わせの日、要望の代わりに過去の記憶を語り出した。稲作農家に伝わる土間と、縁の下から吹き抜ける夏の風。地下水をくみ上げて赤錆色に染まったコンクリートの道路。トンネルのように薄暗く続く、雁木と雪の壁。板塀を黒く染め、少しひび割れたコールタール。建築が作り出す空間と風景を重ねて場面が組み合わせられてゆく。長岡で代々続く農家の跡取りが背負う重圧を仏壇に例えた。梁から吊り下げた構造は、須弥壇下部に地窓を残し、軽やかな光を取り込む。中越地震に備えた耐圧基礎と井桁の土台の間を雁木方向から風が吹き込み、段屋根の高窓から抜けてゆく。祖父の代の伊勢参りのお札を奉った地蔵様が、玄関アプローチまでの動線に変化を生み出す。それぞれの居室は目的別の落ち着きを保つ。シンプルな二段構成の空間は水廻りからの動線と直交して土間の吹き抜け空間と交わる。施主にとっての建築行為は、理想の物を得るための行為ではなかった。過去を振り返り、これから生きてゆくための舞台づくりをしているように見えた。

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