「地方で建築を仕事にする」

はりゅうウッドスタジオの芳賀沼整が、一つの記事を執筆しています。仕事のスタンスをまとめた記事になりました。
「地方で建築を仕事にする」 http://www.gakugei-pub.jp/mokur…/…/ISBN978-4-7615-2627-6.htm @gakugei_todayさんから

 

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唐櫃美術館と豊島の生活

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7月末、唐櫃美術館の展示に追加する材料・機材と生活のための最小限の道具を積んで豊島に向かった。1週間程度の滞在で展示物を整え、地元の住民に混じって運営に参加するためだ。

車で15時間程の道中と1時間程の船の旅はさも海外に来たかのような道のりだが、気候や風土が違う土地に普段生活する南会津のような親近感が湧いていた。島内にコンビニもなく、アパートなどはないが近所に地元の人も良く買いに来るタコ飯屋の屋台や漁師のたこ焼きが食べれる近所の溜まり場がいくつもあり、人々の距離感が近いからかもしれない。

唐櫃地区は唐櫃港のある「唐櫃浜」と豊島美術館(設計:西沢立衛氏)や島キッチン(設計:安部良氏)などがある「唐櫃岡」に分けられ、唐櫃美術館のある唐櫃浜には73世帯142人が暮らす。住民は主に漁業を生業としいる人が多く、今の時期はタコ、蟹等が水揚げされる。豊島内の生業は漁だけでなく、田畑(オリーブ等も)、果樹(レモン・いちご・みかん等)、酪農も行われて、様々な職種の人が島内のあちこちで繋がりがある日常に豊島での生活の豊さを感じていた。

唐櫃美術館はとても大らかな美術館だ。普段、開館は9時過ぎであったり、昼過ぎであったりと漁や農作業等の合間の時間に開かれる。地元住民が交代で店番をしながら、開いていると近所の人が様子を見にきたり、訪れた旅行者と住民が一緒にお茶を飲みをするようなそんな美術館だ。

唐櫃での滞在中は瀬戸内国際芸術祭の期間内と云うこともあり、様々な人に展示や震災以降の活動を知ってもらいたい気持ちで、8時過ぎから準備を始め、いつでも誰でも見にこれるように心がけた。

朝開けておくと、地元の方が顔を見せてくれる。日中はたくさんの人が訪れるのを気にしてあまり寄らない人が「調子はどう?今日も暑いね!」、夕方も他の美術館が閉まっても少し遅くまであけておくと「今日はたくさん来た?」などと声を掛けてもらいながら立ち話をしたりと、特に朝夕は地元の人のと交流の場にもなる美術館であることを改めて実感しながら過ごしていた。

現在唐櫃美術館での展示は福島での震災以降の活動を伝えるために震災以降福島県で生まれた木造仮設の建設から日常までを追った藤塚光政氏の写真展示「木造仮設住宅群-3.11からはじまったある建築の記録-」と東北大学の五十嵐太郎氏のプロデュースと共に仮設住宅地で生まれた彦坂尚嘉による「FUKUSHIMA ART」である。「FUKUSHIMA ART」はあいちトリエンナーレ2013にも出展されるため、あいちトリエンナーレのPRを行いながらの展示となっている。

震災以降の活動を直に報告される機会も東北から離れる程少なく、訪れる方の中には「木造の仮設住宅があることをはじめて知った」と云うひとも少なくない。書籍『木造仮設住宅群』撮影記なかで藤塚氏の「〜われわれは広範囲で起きた超大震災と大津波を忘れないために、時折、映像を繰り返し、見なければならないということだ。(中略)平穏な日常の日々は、災害と大災害の狭間にすぎない。われわれはその事を覚悟しておかなければならないだろう。」と云うフレーズは震災後2年を経過した今、改めて活動を伝えることの大切さを考えさせられる。

瀬戸内芸術祭にあわせた9月1日までの夏期間、唐櫃美術館は少しずつ変化していく。展示に対する解説やPRチラシなどが少しずつ追加されたり、運営に係る様々な人々によって手が加えられていく。

唐櫃美術館は、日々、島を訪れる様々な人々、島民を大らかに受け入れる「溜まり場」「休憩所」「憩いの場」のような場所であり、人の繋がりを通して常に発信し続ける活きた美術館であるのかもしれない。

(文・写真:早川 真介)

 

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「3.11万葉集 復活の塔 」の出版のお知らせ

以下出版社である彩流社のHPからです。

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内容紹介

アーティストと建築家の共同作業から始まった
<記憶に残る>被災地プロジェクト!
自ら被災者である福島の建築家・芳賀沼 整。
「記憶に残る仮設住宅」のコンセプトを打ち出した五十嵐太郎。
死者を記憶するため復興ではなく「復活」の祈りを込めた作品を展開する彦坂尚嘉の
熱き3人の男の強烈な作品と思いに詩歌を載せる。
あれから1年。南相馬の仮設住宅の人たちはいま、何を思うのか。
被災当事者たち、和合亮一、谷川俊太郎、福島/東京の歌人たちから天皇・皇后まで、
幅広い日本人の詩歌をアート歌集で繰り広げる。
全文英訳つき!仙台から始まる国際交流基金の国内巡回展に展示参加!

◎なぜ「万葉集」なのか?
「万葉集」は天皇、貴族、有名歌人のほかに約半数が庶民による作者未詳歌であり、
よって日常をテーマにした歌が多く、多様な人々どうしの連帯性が特徴であり、
本書にもその特徴が根柢に流れている。

著者プロフィール

彦坂 尚嘉(ヒコサカ ナオヨシ)
1946年、東京都生まれ。アーティスト・美術史評。アートスタディーズ・ディレクター。70年、多摩美術大学絵画科油彩中退。82~83 年文化庁在外研修員としてペンシルバニア大学グラデュエート・スクール・オブ・ファインアーツに留学。82年ヴェニスビエンナーレ、87年サンパウロビエ ンナーレ、99年グローバル・コンセプチュアリズム展(N.Y)。著書に『反覆/新興芸術の位相』(田畑書店)『空想 皇居美術館』(朝日新聞出版)。編著に『年表・現代美術の50年』(美術出版社)など。

五十嵐 太郎(イガラシ タロウ)
1967年、パリ生まれ。建築史・建築批評家。アートスタディーズ・プロデューサー。東北大学大学院教授。著書に『建築はいかに社会と回路 をつなぐのか』(彩流社)『新宗教と巨大建築』(講談社)『近代の神々と建築』(廣済堂)『戦争と建築』(晶文社)『過防備都市』(中央公論新社)ほか多 数。

芳賀沼 整(ハガヌマ セイ)
1958年、福島県生まれ。はりゅうウッドスタジオ取締役。主共著『木造仮設住宅群: 3.11からはじまったある建築の記録』(ポット出版)。東北建築賞作品受賞として「家業(柏屋)」および「都市計画の家Ⅱ」(日本建築学会作品選集)ほか多数。
アマゾンでの購入先

木造仮設住宅群 出版のお知らせ!

この度、はりゅうウッドスタジオ制作で、ポット出版より「木造仮設住宅群」という本の出版致しました。

●内容紹介
この本は、仮設住宅という建築だけを扱うものではなく、まして作品として見るためのものでもない。暮らしてきた町を失い、暮らしてきた家を失い、家族や知人と離ればなれになった人たちがともに生活することでつくり出した景色、それが木造仮設住宅群である。
この本は、人間と建築を撮り続けてきたカメラマン・藤塚光政による木造仮設住宅群の記録である。

●目次
まえがき 滑田崇志

1章 希望  木造仮設住宅が描き出す日常
2章 福島の杉  豊かな県産材でまかなう
3章 ログで建てる  マシンカットログ工法と工程
4章 木の空間 1次公募ログハウス仮設住宅
5章 進化した木の空間 2次公募ログハウス仮設住宅
6章 まちをつくる 配置計画とコミュニケーション 日本大学浦部智義氏 文
7章 三春町の木造仮設 地元の力を結集 辺見美津男氏 阿部直人氏 三瓶一壽氏 文
8章 板倉の木造仮設 4寸角材と厚板でつくる杉の家 安藤邦廣氏 文
9章 恵向公園ロハス集会所とグループホーム 自然エネルギーを生かす
10章 南相馬集会所  記憶に刻む、壁画と塔 五十嵐太郎氏文
11章 KAMAISHIの箱 建築家として、新構法の提案 難波和彦氏 文
12章 二地域居住と復興住宅 これからのために 滑田崇志

木造仮設住宅分布図

時系列表
撮影記 藤塚光政
あとがき 芳賀沼 整

●前書きなど
まえがき
滑田崇志(なめだ・たかし/はりゅうウッドスタジオ 代表取締役)
3月11日の夕方、僕たちの行動は、仲間の安全を確かめることと、被害の大きそうな地域から順に施主の安否を確認することから始まった。
事務所のある会津地方も、大きな揺れに見舞われた。繋がりにくい電話をかけ続けて、県内の施主の安否の確認をし、電話先の情報から断片的ではあるが県内の被害が分かってきた。しかし、その日、双葉郡大熊町の役所に道路協議に向かっていた所員と、双葉郡富岡町を訪ねている芳賀沼の安否だけが最後まで確認できなかった。夜中になってやっと電話がつながった。と同時に、富岡町にあった僕たちの設計した新築間もない住宅が流されたことも知った。
次の日、飲料水タンクを持ち郡山方面に向かうと、アスファルトの亀裂や段差のためにまともに走れる道はなく、大津波の報道の影で知らされていない「中通り」の状況も理解することができた。
今回の震災復興については、原発による混乱の状況をみても、過去の事例からだけでは答えのでないものであり、どのようなプログラムを建てようにも時間と労力を要するものだと思われた。そこで第一歩として震災以前から
あった繋がりを頼りに、建築の専門家に協力を願い、「木造仮設住宅群」を考えることとなった。「木造仮設住宅群」とは、東日本大震災において初めて生まれた一連の木造の仮設住宅の群像であり、それぞれの木造仮設住宅が、これからの復興にむけての思想をもっている。一日も早く、避難し、仮住まいを続ける人々を出発点へ先導する。それは、建築そのものだけの問題ではない。避難される方の生活形態や就労、住まい方を見つめ分析することで、「木造仮設住宅群」における各人の行動表現は、今後の復興プロセスの芯となる可能性を秘めている。それぞれの分野の指導者の助言を受け止め、長期化が懸念される福島県の復興に向けて、これまでの災害復興の概念の殻を破るためのプログラムづくりの出発点として出版を決定した。

建築を三つに分けて考えてみる。
一. 考える 二. つくる 三.使う
第一に、今回の災害時に対して、これまでの「考える」という建築家の立場が、目の前に起こった災害への対応に対して、距離があることを感じた。建築家として様々な角度から切り口を見つけ提案を行なっても、効果を上げるに至らないことにもどかしさを覚えた。建築行為を様々な点から見直し、今後の復興活動の起爆剤と成り得るかを考えるために、執筆者各位に文章を依頼している。
第二に、どう「つくる」のか。従来の仮設住宅では、コスト削減と作業手順の簡略化に強く比重がおかれていたが、「木造仮設住宅群」は、住民評価という強い支持から仮設住宅の概念を大きく変えようとしている。一方で仮設住宅の建設現場は、30日という限られた工期の中、一つの敷地に一日数百人の人間が働くという非日常がある。「夢も希望もある住まいつくる」といっても、そうした現場を理解せずには、どれだけ優れたアイディアも実現しにくいものとなる。工法における取り組みのなかで特に象徴的なものとして「KAMAISHIの箱」があり、難波和彦氏の指導の下で新たな仮設建築の試みを行なっている。
第三に、「使う」人々の受け止め方を考える。住民の方の復興の出発点として、「木造仮設住宅群」がどのようなものになっていくのか焦点を当て、その可能性について議論を行ないたい。
これらのテーマについて、本書は藤塚光政氏の写真を中心とした「木造仮設住宅群」のドキュメンタリーである。そこにあった建設から入居後までの一つ一つの瞬間を捉えている。「木造仮設住宅群」の「生きられた」空間を、ご協力くださった各執筆者の文章と共にお伝えしたい。
そして災害を共有する住民の方々、復興に携わる方々に、これからの出発点となる本になることを願っている。

●編集者からの一言
災害時に建てられる仮設住宅(正式には応急仮設住宅)は、通常はプレハブ建築協会によるプレハブとなります。しかし、東日本大震災は、そのプレハブだけではまかないきれないほどの甚大な被害をもたらしました。そこで、仮設住宅づくりの公募がかけられて、施工会社や建築家などが協力し合い、短期間にさまざまなタイプの木造仮設住宅が建てられました。本書は、その中のログハウスによる仮設住宅を中心に、いくつかの木造仮設住宅を紹介しています。
写真家の藤塚光政さんは建設の始まりから完成・入居後も現地に足繁く通い、仮設住宅という建築のみならず、人々とそこでの暮らしを写しとっています。藤塚さんの鋭い視線の中ににじみ出る人間味。その写真が本書の要であり、建築を専門としない方々にも、きっと伝わるものだと思います。
そして、建築界の方々に対しては、この木造仮設に関わった建築家たちがどういう思いで、どのようにつくっていったのか、じっくりと読んでいただけたらと思います。ただ仮の住まいをつくるだけではなかったこれら木造仮設住宅群は、普段のまちづくりや木造の家づくりにも通じることが多々あります。本書がこれからの建築を考える一助となることを強く願っています。
[担当編集者・内田みえ(silent-office)]

木造仮設住宅群
3.11からはじまったある建築の記録
はりゅうウッドスタジオ 制作, 藤塚 光政 写真, 日本大学工学部建築学科浦部研究室 制作協力, 阿部 直人 文, 安藤 邦廣 文, 浦辺 智義 文, 三瓶 一壽 文, 滑田 崇志 文, 難波 和彦 文
定価:1,800円 + 税
ISBN978-4-7808-0174-3 C0052
B5判 / 128ページ /並製
[2011年12月刊行]
印刷・製本●シナノ印刷株式会社
ブックデザイン 橋本祐治、岩松亮太(アキタ・デザイン・カン)

●販売について

まだ本屋さんで並べていただいているか確認はできていませんが、アマゾンやセブンイレブンのインターネットショップからは購入することができます。

アマゾン

紀伊国屋書店

スタジオポット

※本ページについてスタジオポット HPより内容を転載させていただいています。

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