医院併用住宅 雪国型広域中山間地医療施設 あべクリニック (福島県南会津町)


自治医大における僻地医療の思想を礎に、福島県南会津町に耳鼻咽喉科開業を決意した施主の医院併用住宅である。施主にとっては、なによりもまず医院の機能を考えた空間が重要であり、その上で医院ありきに医師単身の住居を併用した物件として考える事から始まった。
院内のあらゆる起こりうる事態を想定して現実として受け止め、シンプルに判断する為に医師は内部プランを考え続けた。私達は、機能と環境をここまで責任を持ち提案する施主の意見を重く受け止めるようになっていった。建築を考える一連の作業の中で、施主である医師に何をできるかを考える事から本来の設計が始まった。
階で用途を区切る方法はよくみられる区別であるが、2階の住居部分については一階クリニックの面積を持て余さずにレイアウトされ、国道から見える正面南長手方向の外壁面の開口を必要最低限とし、凹面の中庭状のスペースを半外部の緩衝空間としている。国道や来院者からの視線を減少させる為の防雪ネットと屋根表層のクリアのポリカーボネート折板により、中庭は雪と分離される空間となった。
■雪国型建築と地方色のあり方
家族を呼ぶまでの数年間単身での生活を決意する施主にとって、除雪を日々継続して行なうことは考えにくい。雪国では、積雪対策として、高床基礎3階建ての住宅や、変形型の屋根が見られるようになっている。私達は、雪国における生活の提案として、施主の負担を軽減し、冬の期間においても押しつぶされない自由な雰囲気のある空間づくりを目指すことにした。
本建築においては、シンプルに雪を落とす片流れの屋根形状と、雪のつきにくく、建物に負担をか けないポリカーボネートの素材を選択することとした。
ポリカーボネート折板と室内ガルバリウム鋼鈑の間の空気層と別に、室内側32kg/m2の断熱材とガルバリウム下地野地板間にも通気層を取り、断熱層の均質化と結論防止策を取りいれた。初年冬は落雪前提の北側に平均して10センチ以下の状態で全て落下した。

■内部境界からの視界と空間認識
医院部分の採光は、外壁に沿った直線的に南側のあたたかい光を受ける構成となっており、住宅部分の採光は、外部空間が貫入した内側からの採光を基準としている。表層的には総二階的ボリュームに見えるが2階テラスに面した外壁の総外壁面に対する割合は5割を超える。切り口面のような入り組み部分に掃き出しの大開口を集中させた。また平日の単身赴任をする施主にとって、普段の住宅領域は小さい方が、意識的にはコントロールしやすく、中庭をとおして外部空間とつながり、遮断するのではなく振いにかけた細かい粒のような風入りこむ。空からは真直ぐな光と屈折した光りが方向を変え差し込み、保護された安心感を生みだす。雪国の住宅は複雑な外壁の入り組みに開口を取ると、凍り付く原因となるが、これらの中和帯と接する2階は併用住宅である事を忘れさせる。

■地域医療と建築の関わり
かつて赴任した南会津に単身赴任し、耳鼻咽喉科を開設する施主にとって、積雪期間の薬局店舗との行き来や、診療時間後と地域住民との交流がテーマの一つであった。医院部分に関しては、南側の国道に開いた配置であり、遠くの国道から切り取られたフレームから医院の様子がよく見えるようになっている。また2階の住居部分についても、完全に外部に対して閉じて住居空間を構成するのはなく、外壁面の開口を抑えながら、貫入された中庭空間を通して外部と繋がる構成となり、夜間においても生活の雰囲気が外部にもれ、閉鎖感がなく、地域の人が溜まることのできる表情となっている。


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芳賀沼整
