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はりゅうの箱

縦ログパネルでつくるシンプルで強固な住まい

「はりゅうの箱」は初めての縦ログ構法による住宅です。150角6mのスギ柱をつなぎ合わせてパネルを作っています。雪深い地域に立地していますが、南側に大開口を設けて日光を取り入れ、暖炉の熱を基礎下に循環させたりと、温熱環境に関する工夫をしています。雪国でも開放感を感じる住まいとなっています。

建物概要
用途:専用住宅
延床面積:93.41㎡(2階建)
構造:木造在来構法(縦ログ構法)
施工:直接発注方式
設計:はりゅうウッドスタジオ
監修:難波和彦+界工作舎
総工費:2000万代前半

Photo by Shinkenchikusha  北西側外観。雪の多い山間地に建つ。縦ログ構法により150㎜角のスギ無垢材を8本合わせた1200㎜幅のパネルからなる箱の組み合わせで全体が構成される。手前に見えるのはパネル構法による車庫。

西側アプロ―チ。暖炉の煙突とダクトが見える。外壁には縦ログパネルを保護するためにポリカーボネート湖波板が張られている。

photo by shinkendhikusya

photo by shinkendhikusya

家の中心部である居間と3600㎜角の箱に納まる食堂・台所が連続する。中央に設けられた暖炉によって温められた熱を床下に送り建物全体を暖める。

今から南側を見る。屋外とバッファーとして設けられた外部デッキには深い軒が架かり、冬日を採り入れ夏期の日射を防ぐ。下部より室内に採り入れる。

階段。踏み板の鋼板はコルクシート貼り。

2階室3。縦ログパネルのほか、一部に光を透過する和紙の壁を設けている。

はりゅうの箱
「はりゅうの箱」は「KAMAISHIの箱」に続く、縦ログ構法のプロジェクトの第2号として計画した。デザインの恣意性を排除し、縦ログ構法の特徴を活かしたプリミティブな空間を目指した。縦ログ構法の実験途中モデルでもあるため、この形態を完成形とせず、今後さまざまなかたちで発展させることを考えている。
「はりゅうの箱」は2m近く積雪する地域に建っている。木質材料によって構成された小さな箱の組み合わせにより、内部と外部が交わる吹抜け中間領域をつくり上げた。屋根には1㎡辺り2tもの荷重がかかり、それを縦ログパネルが支える。吹雪などの厳しい外部環境の中でも、室内環境を快適にし、居住者のアクティビティを自由にするために、薪ストーブの熱をサーキュレーションで基礎に送り込み、吹抜上の上下の温度差の均質化を図っている。
地域産業の活性化
昭和から平成の時代に入り、地方の小規模な製材所が数多く消えていった。背景には、かつての地方独自の流通の中で地域材を活用していた住宅の生産方式が、全国に流通する建材メーカーの材料の組み合わせによる家づくりに取って替わったことが挙げられる。
震災後、浜通りの避難自治体の過疎化の速度は、急激なものとなった。一方で、私たちの住む南会津地域においては、過疎化限界集落化はすでに進行している危機でもあった。
福島県の森林の面積は、全国上位である。外部から材料を買うのではなく、地域で伐採された木材を利用して中小規模の製材所の能力に見合った数量を生産し、それらの材料をシンプルに組み合わせたパネル・ユニット建築を地元の職人によって、ローテクな手法でつくり出す。この仕組みは地域にお金を生み出し、産業が衰退する中で生き残る手法になり得るだろう。システムとして地域に根付かせ復興に活かすことを目指して活動してきたが、今後は復興住宅に留まらず展開し、林業分野の活性化を図ることが目標である。

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