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あべクリニック

雪国型 広域中山間地 医療施設

南会津地域における医院併用住宅で、居住スペースは2階にありながらも、随所に屋外空間を取り込みました。

建物概要
用途:診療所併用住宅
延床面積:352.97㎡(2階建)
構造:木造在来軸組構法
施工:
設計:はりゅうウッドスタジオ
総工費:

南側外観

診察室

処置室

待合室

リビングダイニング。リビングの奥にデッキスペースが見える。居住部分は2階にありながらも、屋外空間を随所に取り込んでいる。

医院へのアプローチから望む。2階のポリカーボネート屋根下の半屋外空間は居住スペースからアクセスできる。防雪ネットを貼り、大きな蚊帳のようなデッキスペースになっている。

設計コンセプト
自治医大における僻地医療の思想を礎に、福島県南会津町に耳鼻咽喉科開業を決意した施主の医院併用住宅である。施主にとっては、なによりもまず医院の機能を考えた空間が重要であり、その上で医院ありきに医師単身の住居を併用した物件として考える事から始まった。
診療中の明暗、手を洗うまでの動き、看護士の視界管理、準備室の流れと器具の配列、診療室と事務室の繋がり、待合室から中待合室、診療、ネブライザー等、から待合室に戻るまでの流れ、トイレの手洗いの動作、子連れの患者さんのトイレ利用、幼児の動作に対しての対処、院内のあらゆる起こりうる事態を想定して現実として受け止め、シンプルに判断する為に医師は内部プランを考え続けた。
私達は、機能と環境をここまで責任を持ち提案する施主の意見を重く受け止めるようになっていった。建築を考える一連の作業の中で、施主である医師に何をできるかを考える事から本来の設計が始まった。
階で用途を区切る方法はよくみられる区別であるが、2階の住居部分については一階クリニックの面積を持て余さずにレイアウトされている。国道から見える正面南長手方向の外壁面の開口を必要最低限とし、凹面の中庭状のスペースを半外部の緩衝空間としている。国道や来院者からの視線を減少させる為の防雪ネットと屋根表層のクリアのポリカーボネート折板により、中庭は雪と分離される空間となった。
雪国型建築と地方色のあり方
家族を呼ぶまでの数年間単身での生活を決意する施主にとって、除雪を日々継続して行なうことは考えにくい。雪国では、積雪対策として、高床基礎3階建ての住宅や、変形型の屋根が見られるようになっている。私達は、雪国における生活の提案として、施主の負担を軽減し、冬の期間においても押しつぶされない自由な雰囲気のある空間づくりを目指すことにした。
本建築においては、シンプルに雪を落とす片流れの屋根形状と、雪のつきにくく、建物に負担をか けないポリカーボネートの素材を選択することとした。
ポリカーボネート折板と室内ガルバリウム鋼鈑の間の空気層と別に、室内側32kg/㎡の断熱材とガルバリウム下地野地板間にも通気層を取り、断熱層の均質化と結論防止策を取りいれた。初年冬は落雪前提の北側に平均して10cm以下の状態で全て落下した。
内部境界からの視界と空間認識
医院部分の採光は、外壁に沿った直線的に南側のあたたかい光を受ける構成となっており、住宅部分の採光は、外部空間が貫入した内側からの採光を基準としている。表層的には総二階的ボリュームに見えるが2階テラスに面した外壁の総外壁面に対する割合は5割を超える。切り口面のような入り組み部分に掃き出しの大開口を集中させた。また平日の単身赴任をする施主にとって、普段の住宅領域は小さい方が、意識的にはコントロールしやすく、中庭をとおして外部空間とつながり、遮断するのではなく振いにかけた細かい粒のような風入りこむ。空からは真直ぐな光と屈折した光りが方向を変え差し込み、保護された安心感を生みだす。雪国の住宅は複雑な外壁の入り組みに開口を取ると、凍り付く原因となるが、これらの中和帯と接する2階は併用住宅である事を忘れさせる。

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