福島県応急仮設住宅に関するはりゅうウッドスタジオの活動経過報告

●福島県応急仮設住宅公募の概略
4月11日、福島県より県内業者に対して約4000戸の応急仮設住宅建設の公募があり、18日に応募の〆切、22日に建設業者の決定がありました。( http://bit.ly/hk3pui )
県の公募の目的として、被災された建築関係者の雇用と、(風評被害で使うことのできない)県産材の木材を使うという点があったように思います。
これまで、木造の応急仮設住宅はあまり前例がなく、災害時においてはプレハブ協会から支給される鉄骨造のプレハブ住宅が主流でした。木造に比べて建設性に優れるものですが、断熱性通常のものよりも低かったり、ヒートブリッジ等による結露の問題などが起こっています。新潟県中越沖地震における地震で、プレハブの仮設住宅が主流につくられる中、地元の工務店が2棟ほど木造で建てられたことがあったようなのですが、かなり評判が良かったということもあったそうです。また結露の問題等については、鉄骨造よりも防ぎにくいものです。
通常仮設住宅は、2年を想定しているのですが、福島県では原子力発電所の問題もあり、より長期化を想定したものでなくてなりません。

●JIA(日本建築家協会)福島地域会の動き
JIA福島地域会としては、応急仮設住宅の公募が具体化し始めた頃、JIAとしての関わり方について議論されました。建築家という立場を考えるのであれば、施工者とは独立して活動しなければなりません。しかし、県としても、緊急性を考えた上での建設業者に対しての公募でもあり、積極的にアプローチしなければ、よりよい仮設住宅がつくれないと判断し、建設業者に対して、積極的に図面提案を行なっていくということになりました。
結果的に、福島県建設業協会の方への図面協力をするという形となり、福島県建設業協会としても無事受託することもできました。
はりゅうウッドスタジオとしては、JIA福島地域会での議論を元に基本住戸図面作成等を協力して行ないました。

●はりゅうウッドスタジオ+日本大学浦部研究室の動き
また同時に日本ログハウス協会東北支部でも応募の流れがあり、はりゅうウッドスタジオはログハウス協会員でもある芳賀沼製作とも近い位置にあるために、ログハウス協会案についても図面協力を行ないました。また協力関係にある日本大学工学部建築計画研究室(浦部研究室)と共同して応募案作成を行なっています。ログハウス協会案については、空地を利用した長期化に備えたクラインガルデン(市民農園)の思想を取り入れた提案を行なっています。
ログハウス協会東北支部案についても、無事受託することができました。
ログハウス協会東北支部の受託物件にについては、はりゅうウッドスタジオ+浦部研究室で設計のお手伝いをしたいと考えています。

空地を利用した市民農園の提案。

生活道路デッキ等が通りの風景をつくる。


今回設計者側の立場として、求められてはいませんでしたが積極的に応急仮設住宅の公募に関わり、結果的には少しでも良い提案をつくることができたという点で良かった思います。設計者の意見がすべて通るような状況としてはありませんが、自分たちを建築活動者として考えた時にやらなければならなかったし、参加したことで、またこれまでと違った仮設住宅というものが提案できました。今後、具体的な配置案の作成や、建設になりますが、できるだけ仮設住宅の建設に関わっていきたいと考えています。これからが本番です。
(文 滑田)

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