F社 郡山社屋

Category 作品紹介 施設 — @ 2019年4月10日
Photo by Shinkenchikusha

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2地域に跨り避難期間を支える拠点

震災直後、富岡町民の2か所目の避難先となった郡山市は市内に富岡町の仮設庁舎が置かれ、F社にとって避難期間のもうひとつの拠点を置く背景となった。今回、富岡町の避難者でもある友人から敷地の一部を譲り受け郡山社屋の建設に至った。

 

Photo by Shinkenchikusha2階執務室、8mスパンの梁は、富岡から切り出したモミ材を組み合わせた張弦梁となっている。できるだけ集成材を用いず、富岡の森の材料をそのまま活かせるようにしている。また縦ログ壁についてモミ材を利用し、スギ材とは異なる表情をつくり出している。

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2階執務室、8mスパンの梁は、富岡から切り出したモミ材を組み合わせた張弦梁となっている。できるだけ集成材を用いず、富岡の森の材料をそのまま活かせるようにしている。また縦ログ壁についてモミ材を利用し、スギ材とは異なる表情をつくり出している。

 

富岡社屋との共通点は、富岡の森で伐採した木材をすべて活用することであるが、縦ログ構法に適するスギ材は富岡社屋への割り振りを優先し、残りのスギ材とヒノキ、建築材料としてあまり使用されないモミ材も活かすことを初期に設定した。

平面計画の中で、不整形の敷地形状をカバーすることや、隣の(友人が経営する)店舗との同居を図りながら、業務に必要な駐車台数の確保等が課題となったため、2階に配置した会議スペース下部を駐車スペースとして活用し、ピロティの下から中庭を抜けて南側に延びた執務空間が見える計画とした。

2階執務室の小屋組みの構造は、6.5m長にしたモミ材を使用し連続する張弦梁の一室空間をつくり出した。

 

koriyama 06

 

 

Photo by Shinkenchikusha南西側より外観を見る。会議室(道路側)はスギ材による縦ログ、執務室(南側)はモミ材による縦ログで、会議室のみ内外木材現しである。

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南西側より外観を見る。会議室(道路側)はスギ材による縦ログ、執務室(南側)はモミ材による縦ログで、会議室のみ内外木材現しである。

 

建築概要

F Office Building in Koriyama

2017年 福島県郡山市

用途  :事務所

延床面積:301.17㎡(2階建)

構造:木造在来構法

施工:芳賀沼製作

設計:はりゅうウッドスタジオ

F社 富岡社屋

Category 作品紹介 施設 — @
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復興の魁となる木造

本計画が始まった当時(2015年)に避難区域内の樹木を建築材料として使った例はほとんどなく、町、県、国のさまざまな林業関係機関を回り、素材を砕いて成分検査等を行い富岡町外へ持ちだせるように許可を得たが、地元の林業関係者の間では町外への搬出の是非の議論が起こった。幸いにも富岡の海岸沿いの地域の放射線量の数値は原発事故の直後でも低いところが多く、木材は現地での皮むき作業によってその値が極端に下がったため、いわき市の製材所で製材と乾燥を行い、工期を短縮するために分業体制で建築へと進んだ。

富岡社屋の構造については純粋に150×150㎜の杉材を縦ログ構造壁として活かし、4隅のコアに挟まれた2階までの吹き抜け空間を執務室とした。海側の通りに向いた1・2階の地域交流室・多目的スペースは、復興期の富岡でのさまざまな活動を支えるために開放できる配置として、地域づくりに貢献できる場所づくりを目指した。

 

P06 パース _ レイアウト

 

 

Photo by Shinkenchikusha富岡社屋執務室の吹き抜けを見る。縦ログパネルが2層分となり、約6.1mの吹き抜け空間を構成している。梁、壁共に、富岡産材の材料を使用している。1階においては適度な通風プライバシーを確保しながら、執務室全体としては、木によるトンネル状の空間が街に開くような大開口を設けている。

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富岡社屋執務室の吹き抜けを見る。縦ログパネルが2層分となり、約6.1mの吹き抜け空間を構成している。梁、壁共に、富岡産材の材料を使用している。1階においては適度な通風プライバシーを確保しながら、執務室全体としては、木によるトンネル状の空間が街に開くような大開口を設けている。

Photo by Shinkenchikusha南東側外観。右手に見えるデッキは、地域交流室に面しており、内外が一体で使える場所になっている。

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南東側外観。右手に見えるデッキは、地域交流室に面しており、内外が一体で使える場所になっている。

Photo by Shinkenchikusha執務室東側の縦ログ構造壁をみる。約4.1倍の壁倍率と準耐火性能の大臣認定を取得した1800㎜幅の縦ログパネルを用いた壁面を構成している。

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執務室東側の縦ログ構造壁をみる。約4.1倍の壁倍率と準耐火性能の大臣認定を取得した1800㎜幅の縦ログパネルを用いた壁面を構成している。

Photo by Shinkenchikusha東側から地域交流室、多目的スペースを見る。縦ログ壁を利用して外部に開くような設えとした。

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東側から地域交流室、多目的スペースを見る。縦ログ壁を利用して外部に開くような設えとした。

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建築概要

F Office Building in Tomioka

2017年 福島県双葉郡富岡

用途  :事務所

延床面積:343.53㎡(2階建)

構造:木造(縦ログ構法)

施工:東北工業建設

設計:はりゅうウッドスタジオ

総工費:〇〇万円

 

 

ボーダーレスの家

Category プロジェクト 作品紹介 — @ 2019年4月9日
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生きるための場所

都内の十字路に面する狭小角地に建つ住宅。共同設計者であるボスニア・ヘルツェゴビナ人建築家セルマ・マシッチの自邸である。設計から施工業者選定、コスト調整を含め、完成まで与えられた工期が1年未満というタイトなスケジュールでプロジェクトが始まった。

パネル制作後の工程が簡易であること、また木を仕上げせずそのまま使いたいというセルマの要望などから150㎜角スギ材を使った縦ログ構法を選択し、狭小の敷地に最大限の木質スケルトン一室空間をつくり、スキップフロアを活かした構法とした。

 

190226 安東邸 断面パース-01

 

部分的に壁倍率確保のため縦ログパネルを2重にしたダブル縦ログ構法となっている。床、壁、階段などの主要な部位にすべて同一材料を使用した。縦ログパネル+スギ板外壁の仕様で準耐火構造の認定を取得しているため、鉄骨やコンクリート系のパネルなして準防火地域に耐える木造建築とすることができた。

 

Photo by Shinkenchikushaリビング・ダイニング。縦ログパネルは構造材がそのまま仕上げ材となるため内部はスギ材に囲まれている。キッチンのシンクは建て主であり設計者のセルマ氏が自ら制作したもの。

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リビング・ダイニング。縦ログパネルは構造材がそのまま仕上げ材となるため内部はスギ材に囲まれている。キッチンのシンクは建て主であり設計者のセルマ氏が自ら制作したもの。

Photo by Shinkenchikusha2階から1階のダイニングを見下ろす。床、壁、階段など主要な部分がすべて縦ログパネルでつくられる。スキップ状に繋がる一室空間を透過性のある布が柔らかく仕切る。

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2階から1階のダイニングを見下ろす。床、壁、階段など主要な部分がすべて縦ログパネルでつくられる。スキップ状に繋がる一室空間を透過性のある布が柔らかく仕切る。

 

この住宅では従来の工程を見直し、材料費は削減せず、工期短縮と作業工種の単純化による作業費削減とそれらに伴う経費節減を目指した。縦ログパネルの施工性のよさを活かし、その日に設置する分だけを工場から運ぶことで、狭い敷地での資材置き場の不足という問題にも有効である。パネル建て方から屋根までで1週間、コンクリート基礎工事期間を除くと40日で確認申請の完了検査に到達した。

 

Photo by Shinkenchikusha居室1から居室2を見る。2,3階は階段室を挟んで南北にそれぞれ1部屋ずつを配したシンプルな構成で、各部屋の機能は限定されていない。居室1と居室2のレベル差は1000㎜。

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居室1から居室2を見る。2,3階は階段室を挟んで南北にそれぞれ1部屋ずつを配したシンプルな構成で、各部屋の機能は限定されていない。居室1と居室2のレベル差は1000㎜。

Photo by Shinkenchikusha居室2。東側は建物が隣接しているため、南と西のみに窓を設けている。

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居室2。東側は建物が隣接しているため、南と西のみに窓を設けている。

Photo by Shinkenchikusha3階の居室3(左)とサンルーム(右)。サンルームにはトップライトが開いている。

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3階の居室3(左)とサンルーム(右)。サンルームにはトップライトが開いている。

Photo by Shinkenchikusha西側壁面。外壁は厚さ15㎜のスギ板。通りに面してリビングに開いた窓は幅1,650㎜(縦ログ11本分)、高さ2,230㎜で、腰壁の高さは700㎜。

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西側壁面。外壁は厚さ15㎜のスギ板。通りに面してリビングに開いた窓は幅1,650㎜(縦ログ11本分)、高さ2,230㎜で、腰壁の高さは700㎜。

Photo by Shinkenchikusha南側の通りから見る。右に隣接するのは自転車で、この地域に住む人たちが行き来する。

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南側の通りから見る。右に隣接するのは自転車で、この地域に住む人たちが行き来する。

Photo by Shinkenchikusha南西側俯瞰の夕景。住宅や店舗が密集する都心の角地において、建物全体を覆うスギ材の外観と格子状に開けられた大きな窓が際立っている。

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南西側俯瞰の夕景。住宅や店舗が密集する都心の角地において、建物全体を覆うスギ材の外観と格子状に開けられた大きな窓が際立っている。

 

1階のリビング・ダイニングでは一部を設計活動の場とすることも想定され、人や車が多く行き来する道に対して大きな窓を設けている。街角の交差点に、木質パネル打ち放しの住宅が加わり、街には新たな風景が生まれた。

この協働設計を通じて、セルマが幼少期を過ごした戦時下のサラエボでの体験と、全国に分散した原発避難者が抱える葛藤が重なって見えた。戦争体験や原発避難によって、これまで生きてきた場所と生活の場が分断される。ノスタルジーだけでなく、良くも悪くも、場所と時間と生活は思考の内面で繋がっている。平和な東京の、人びとが行き交う角地を好み、この敷地を決めたセルマにとって、ここは生きるための場所としての出発点となる。大きな窓を通して、住宅は通りや街へと繋がる。そしてその意識は故郷のサラエボにも繋がっていくのだろう。

シンプルなスギ材の表情は、街角のさまざまな出来事を受け止めながら多様な変化に対応する。そして、敷地境界線も国境さえも意識しない風景の繋がりをつくりだす。

 

Photo by Shinkenchikusha

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建築概要

Borderless House
2018年 東京都豊島区
用途  :専用住宅
延床面積:62.91㎡(3階建)
構造:木造(縦ログ構法)
施工:はりゅうウッドスタジオ
設計:はりゅうウッドスタジオ、セルマ・マシッチ
総工費:      万円

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